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夫婦対談「クワズイモのくらし」

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私は、2006年8月1日、第一子を妊娠9週で繋留流産、2007年8月13日、第二子を子宮内胎児死亡のため妊娠34週で死産しました。泣き声をあげることのなかった子どもに、もう一度会う旅を続けています。

妊娠を目指している人が月経を迎えることを、「リセット」というのだそうだ。

私は今度の春で、「リセット」し続けて3年半となる。数えるならば42回、毎月欠かさず「リセット」してきた。一時期は妊娠することだけに心を持って行かれてしまい、うまく生きていけなくなった時もあった。

今は、ずいぶん楽になった。妊娠することは宝くじに当たることに近いと考えている。宝くじに当たることを夢見る人は数多(あまた)いるが、宝くじにはずれて泣く人はいないだろう。買わなければ当たらない。当たったらまるもうけだ。

毎月、何かいいことを生活に加えている。体に負担にならないこと、心に負担にならないこと、お財布に負担にならないこと、この三つに当てはまることなら何でもだ。これはいいな、と思ったら、次の月も続ける。例えばウォーキング。例えばストレッチ。例えば朝パンではなくご飯を食べる。例えば夜9時には寝る。何しろ40回近くリセットしているのだ。大小様々な習慣を身につけた。いずれにしろ、妊娠しやすい体を作ることは、女性にとって悪いことはあまりない。何より、自分の身体をじっと思いやり、その声に耳を澄ませて日々を送ること。その大事さは一言ではちょっと説明できないくらいだ。もしかして延命につながるのではとさえ思うくらいだ。

いつもその月の自分ではなく、次の月の自分を思う。体に対してすぐに結果を求めない。何日か後のリセットを避けようとして時を過ごしていると、今、目の前にある大切なことを逃してしまうからだ。例えば夫の小さな風邪。例えば息子の物思い。例えば私に期待を寄せてくださって舞い込んできた新しい仕事。

だから、今月の「宝くじ」は、買ったらすぐに神棚に挙げて、後は忘れるくらいでいい。私の「宝くじ」は抽選発表を見逃すことはないからだ。もし当たっていれば、間もなく私の体をノックする。外れていてもまたノックがある。月に潮目があるように、私の体にも潮目があるのだ。今では、その潮目の変わり目、小さなノックの音が聞こえるようになった。月経が訪れる4、5日前には分かる。

朝、起きたときに分かる。目覚めがものすごく唐突で「ハッ」というような感じで起きるのだ。それが合図だ。そして暗闇の中で息を整え、思う。 「今月もダメだったんだな」

でも、それは次の卵が育っている証拠だ。数日中に来る月経は、終わりでもあり始まりでもあるのだ。まぎれもなく喜びなのだ。